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1月20日(水)

 掃除も終わって、昼ご飯を食べ、ちょっと休んでから、散歩がてら、近くの区役所まで書類を取りに出かけることにした。歩いて15分ほどのところだ。ぶらぶら歩いていくと、若者からお年寄りまで、いろんな人とすれ違う。

----- なんだ、いつもと変わらないじゃないか・・・

 緊急事態宣言が出たというのに、普段と大して変わらない。普通の人が普通の顔をして、普通に歩いている。

----- これでいいのか?

 自分も出歩いているのだが、戸籍謄本が必要になって取りに行くところだから、これは「不要・不急」の用事ではない。しかし、サッサと用事を済ませて帰るに越したことはない。そう思いながら区役所に入ってみると、中は、人で一杯だった。

----- 不要不急でない人がこんなにいるということか!

 受付では、退職後のアルバイトみたいなお年寄りが、テキパキと人を裁いていた。手際はよいが、あまり愛想はよくない。受付番号が印刷されたレシートを渡され、向こうのシートに座って待てと言う。

 15分ほどすると、窓口の棒の上に取り付けたモニターに番号が表示され、アナウンスで3番の窓口にと呼ばれた。そそくさと窓口に行き、用意した申込書を差し出す。窓口は、テキパキした感じの若い女性だ。でも、忙しいせいか愛想はあまりよくない。冷たい声で、

----- 住所の末尾が、登録と違います
----- え、えっ!

 どうもマンションの部屋番号まで書かなくてはいけなかったらしい。訂正すると、やはり、向こうのシートに座って待てと言う。

 それからさらに15分ほど待つと、病院にあるのと同じようなモニターに番号が出て、今度は8番の窓口にと表示されている。

----- うーん、昔と比べるとずいぶんスピーディーだなぁ

 感心しながら8番に行くと、

----- ここは7番です

 という。長いカウンターに仕切りがないので、どこからが8番なのかあいまいだ。どうやら、レジスターのあるところだけが8番らしい。ともかく450円払って、1枚紙の謄本を受け取る。

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----- これは税込みの値段かな、いや、戸籍謄本をもらうのに、そもそも税金がかかるのかしらん。

 などと、アホなことを考えなら区役所を出た。久しぶりに、お天気で気持ちがいいが、はやくかえって一服しようと足早になる。不織布のマスクが息苦しい。

 家では、カミさんが職場の上司らしき人と何やら携帯で話していた。ずいぶん話し込んでいる。はて、なんだろうと思っていると、電話を終えたカミさんが書斎にやってきた。

----- ね、出たんだって。主任代理のNさんが、陽性だったんだって!
----- おいおい、それって、コロナかい?
----- うん、これから消毒だっていってた。大変らしいよ。

 ふと、嫌な予感がした。カミさんの顔をジーと見ながら、

----- キミは、もしかして、ノウコウ接触者なのか?
----- 大丈夫みたい
-----大丈夫みたいって、白か黒かって聞いてるんだけど

 カミさんの話によると、代理のNさんは、1週間の冬休み終わり頃に感染したらしく、職場の全員が、この1週間は会っていないから大丈夫だと、そういうことらしい。

----- みんな、ほんとに良かったって言ってたわ

 いいとは言い切れないが、天のハイザイというものだろう。ありえない幸運だったのかもしれない。 夜、ニュースを見ると、例によって、感染者数の報道をやっていた。

----- 「F県の今日の感染者数は、200人でした」

----- そうか、1/200なんだ

 妙に感心してしまった。

確実なお知らせ

1月17日(日)

 誕生日プレゼントに、カミさんからパナソニック鼻毛カッターをもらった。誕生日プレゼントとしてはどうかとも思うが、今日、アマゾンから届いたので、開けてみる。とても、そんなものには見えない立派な外観だ。

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 一緒に替え刃も頼んであったが、それだけが誕生日に届いていて、本体は今日という、変な配送スケジュールになっていた。スマートウォッシュと言って、水洗いできるらしいが、まだ試していない。第一、まだ鼻毛が伸びていないので、使ってもいない。そのうち使って見よう。

 今はそれよりも、先日の失敗が尾を引いていて、なんとか2度と同じことにならないよう、対策を立てておくのが先決だ。予定は大体Googleカレンダーに書き込んでいるのだが、パソコンを消していると役にたたないし、もっと確実な対策が必要だ。

----- わたしのカレンダーに書き込んだらどう?

カミさんが言う。
 「わたしのカレンダー」というのは、キッチンに掛けてある月めくりのカレンダーだ。書くのも面倒だし、第一、大事なことはきれいに忘れるのがカミさんなので、アテにならない。

----- それもあるけど、書くのが面倒そうだなぁ

 あいまいに返事をしていると、ふと、気が付いた。

----- あっ、これがあるじゃないか!

 気が付いたのは、Kindle Fireという電子書籍用のタブレットだ。充電スタンドもついているので、充電切れの心配もない。とある勘違いから、半年ほど前に買ったものだが、結局出番がなく、棚の隅で放置したままになっている。このタブレットには、アレクサという人工知能が付いているのだ。こいつにスケジュールを管理させよう。

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----- アレクサ、リマインダーをセットだ

 少し気恥ずかしいが、呼びかけてみる。

----- はい、何のリマインダーですか

 ふーん、ちゃんと返事するじゃないか。

----- 今日の6時に晩御飯だ
----- 今日の午後6時に晩御飯をお知らせします

 どうやらうまく行ったようだ。晩御飯にリマインダーはいらないが、これは試しというものである。そして、6時を待った。

----- ポーン、ポーン、晩御飯です

 確かに音声でお知らせされた。なかなかの優れものだ。調子に乗って試してみる。

----- アレクサ、今日のニュースは
----- はい、yahooニュースをお知らせします
  ・・・・

 なるほど、これは使えそうだ。これからは机の端においたアレクサに向かって用事を言えばいいのだ。確実に教えてくれる。そのうち、家中のあちこちに、スピーカーのアレクサをおくことにしようと思う。それで、カミさんに用事をたのんだ時に、「ちょっと待って」などといわれたら、

----- アレクサ、10分のタイマーを頼む

と言うことにしよう。

 

誕生日

1月13日(水)

 あれから1週間も経ってしまったとは・・・。
 仕事に手を取られて、頭が一杯のまま、日にちだけが過ぎてしまう。

 それでも、先週は、マスコミが大雪が降るというフレ込みで騒いでいたことを覚えているが、こちらでは、期待(実は大雪が好きだ)したほどではなく、北側のベランダに3センチほど積もったきりだ。もったいないので、雪ダルマを作ってみたが、カミさんには、まるで相手にされない。ただ、コロ吉がうさんくさそうに眺めてただけだ。

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  TVでは、緊急事態宣言が話題だったが、彼はまるで他人ごとのように話している。第一、ああ地味じゃ伝わってくるものがない。イギリスのボリスさんやドイツのメルケルさんみたいに、もうすこし人間味のある言い方はできないのか。日本国民としてちょっと残念だ。

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 この一週間ほど、毎日1時、2時まで仕事をしていた。あまりにも頑張ったので、昨日あたりが実は限界だったのかもしれない。さすがに、疲れていた。

----- 今日は、早いとこ風呂に浸かって、ビールでも飲むかなぁ

時計を見ると、いつの間にか6時を過ぎている。ちょうどいい時間だ。早速、風呂に飛び込んで、ゆるゆると温もることに。後は、ビールを飲むだけだ。

----- ねえ、もしかしてだけど、今日じゃなかった?

 突然、風呂の向こうからカミさんの声がする。今日?なんのこっちゃ。何だか不吉な感じがして、風呂の中で寒気がした。
 今日・・・。ああッ!そうだ、18時から遠隔で話す予定だ。忙しすぎて、きれいさっぱり忘れていた。オンラインの向こうで何十人かが待ちぼうけ状態になっている・・・。

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 それからのことはあまり思い出したくない。ものすごい勢いで風呂を飛び出し、超速でキーをタイプしてZoomに接続し、オンラインでいろいろ言い訳などし、何とか帳尻を合わせた。TVのあの人以上の失敗だ。

 それで今日である。
 やる気も失せたので、10時くらいまで寝ていると、また、カミさんがやってきて、

----- あなた、今日、誕生日じゃない? 

夜更かし

1月5日(火)

 昨夜は、書斎で酒を飲みながら遅くまでTVを見てしまった。それで、起きるのが遅くなったのだが、酔っていたせいか、番組の内容はまるで覚えていない。

----- はて、何を見たのだったか・・・

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 考えながら顔を洗っていると、書斎の方から声がする。

----- あら、何でこんなところにお酒があるのかしら

 ま、まずい。クローゼットのトビラを開けたらしい。昨夜、面倒だったので、つい置いたままにしてしまったやつだ。実は、カミさんとの約束で、酒は1日おきにしか飲まないことになっている。昨年、やたら太ってしまい、そういう取り決めになってしまった。昨日は、禁酒日だった。

----- キャビネに入らなかったので、そこに置いているだけだよ

 "キャビネ"とは、酒ビンだけをいれる小さなボックスで、居間に置いてある。たくさんの酒ビンがいつも満杯状態なので、とっさの言い訳としては、うまいことを言ったものだ。実は、机の後ろの棚にも、1本隠しているのだが、それはまだ見つかっていない。

 ----- ・・・・・

 カミさんは何も言わずに、衣類の整理をしている。顔が見えないので、反則に気づいたのかどうか、確かめようもないが、ちょっとブキミだ。すると、

----- 頭痛がするし、風邪ひいたみたい

 どうも、具合が悪いらしい。ふと、"コロナ"の3文字が頭をよぎるが、県内の昨日の感染者は150人かそこらだ。まさか、我が家にまではやってこないだろう。だが、心配なので、カミさんの額に、自分の額を押し当てて熱を測ってみる。幸い、たいしたことはないようだ。
 しかし、

----- これはいかん。薬を飲んでベッドで休んだ方がいいね。 

 カミさんに「大したことはない」などと言ってしまうと、大抵、機嫌を損ねる。どうかすると怒り出したりするから注意しなくては。

  飲んだ風邪薬のおかげか、カミさんはそのままずっとベットで寝ていた。起きてきたのは昼も大分過ぎてからだ。

----- 具合はどう?
----- うん。お昼、どうしよう、一緒に買い物にでも行く?

 とうに酒ビンのことなど忘れてしましまったようだ。 

箱根駅伝

1月3日(日)

 今日は朝からポカポカと良い日よりだ。ベランダに布団を干しつつ、テレビの方に目をやると、箱根駅伝で復路がスタートするところだった。特に駅伝が好きなわけではない。ただ、しばらく首位を飾っていた青学が、昨日の往路では12位と振るわなかった、ということくらいは知っている。

 ちょっと興味が湧いて、モニターを見る。次々にスタートしていく様子が映されるが、よくもまあ、あんな急な坂を駆け下りることができるものだ。

----- 頑丈なヒザだなぁ

などと、感心したりする。調べたところ、彼らは平地でも時速20km以上で走り続けるのだが、意外にも、この下りの6区が、一番、遅い速度らしい。それでも、私の自転車(電動)よりだいぶ速いのだが。

 最近は、スタート前だからと言って、緊張でガチガチになる選手ばかりではないようだ。サングラスをして、笑いながらピョンピョンと飛び跳ねたりしている。不敵な奴だ。そうかと思うと、居ました、好きなタイプの選手。

 痩せて針金のような体付き、ロボットのような四角い顔にボサボサの髪。への字に結んだ口元に何やら悲壮すら感漂うストイックな目つき。これぞ、駅伝選手だ。

----- きっと倒れるまで走り続けるんだろうな

 それはT大7区を走ったN選手。髪をなびかせながらひたすら走り続ける様子は、なんだか素晴らしい。『はぐれ長屋の用心棒』という時代小説に出てくる居合の達人、菅井紋太夫(たいてい知らんだろうけど)を彷彿させる。もちろん、ゴールでは倒れ込んで動けなくなってしまうが、駅伝選手のカガミだ。TVの解説で、主将だというので、「なるほど」と得心したことだった。

 それにしても、選手に伴走するワゴン車、あれは本当に必要なのか。

----- 「遅れるんじゃない。放送車について行け!」
----- 「あきらめるな、1秒でも刻み取るのがお前の役目だ!」
----- 「やるじゃないか!男だね、男だよ、お前は!」

 車体に設置した拡声器から、激励を浴びせかけている。素人の観客としては、どうにも耳障りだ。あんなにしつこく選手に付きまとわなくてもいいのではないか?(あくまでも素人の意見)というか、全世界的にもヘンな「風習」じゃないのか?(あくまでも素人の意見)

 もっとも、駅伝は日本で独自に発生し、発達してきたものだから、「全世界的に」というのは当たらないかもしれないが、それにしても、しつこい激励(あくまでも素人の意見)だなぁ、と思うのである。

 なぜか、ベランダに立ったまま、ずーっと見ていたので、掃除が遅れた。居間に入って掃除機を取ると、

----- もう始めるのかい(本当に必要か)?

という表情でコロ吉がこっちを見ていた。

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年賀状

1月1日(金)

 家中に掃除機をかけるのに1時間もかかったので、10時になってしまった。そろそろ、やり残した仕事にかからなければいけない。カミさんは、元旦というのに朝からパートに出かけていった。オモチャ売り場で働いているので、大抵、休めないことになっている。

 なに、2人暮らしなので、どうということもない日常だ。掃除が終ったので、窓をあけ、空気を入れ替える。寝ていた猫のコロ吉が「何事か」という様子で顔をあげる。いつものとおりだ。我々は、曜日や休日に関係なく暮らしているのだ。

 仕事にかかったころ、F大のE先生に年賀状を出していなかったことを思い出した。昨年、賀状が来なかったので、そういうことならと、出さなかったのだが、やはり気にかかる。

----- そうだ、ハガキを画像にして、メールで送っておこう。

 メールなら、返信の負担をかけずに済むし、義理も果たせる。なかなかいい考えに思えた。アッというまに画像を作って、メールで送信。めでたしめでたしだ。

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E先生への年賀状

 午後になってカミさんが帰ってきた。

----- 年賀状きてたわよ

 仕事に夢中になるあまり、1Fのメールボックスに取りに行くのを忘れていた。「ありがとう」カミさんから受け取り、1枚ずつ見ていく。たいていは、見ても見なくても大差ないようなペラッとした賀状ばかり。もうちょっと手間をかけて欲しいと思うが、そうもいかない事情があるのだろう。中には、

----- 『大画面テレビの前にマッサージチェアを置き、ぼんやり眺め暮らしているうちに、近所が限界集落になりつつあることに気づきました・・・』

----- な、な、なんという年賀状だ

 縁起が悪いので、他をみることに。
 すると、あろうことが、E先生から年賀状が届いていた。

----- まずい、これは相当にまずいことになった。E先生は、「ハガキを出したのに、返事がメールだった」と思うに違いない。はて、どうしたものかなぁ・・・

 思い悩んでいると、玄関で声がする。どうやらY子さんが年賀にきたらしい。Y子さんはカミさんの親友で、高校の教師をしている。いまだに独身だ。毎月、数回は遊びにくる。部屋の中から「いらっしゃい」と言ってしばらく、居間に行ってみると、手土産のおせち料理を並べていた。

----- ようやく正月らしくなってきたわい

 それからは、どうなったかあまり覚えていない。おせちをつまみながら、ビール、焼酎、ワイン、カクテル、テキーラなど、手当たり次第に飲んで、夜遅くまで騒いでいた。ひとまず、人並みの正月というものだ。

 

 

よなよなエール

12月29日(火)

 書き残していた年賀状を投函しに、坂下のポストへ歩いていく。ついでに、ビールを買い溜めしておこうと思い、スーパーまで足を延ばした。明日から、大雪というから、年越しのビールに不自由しないようにする備えだ。

  行ってみると、「駐車場は満車です」と張り紙があって、スーパーは、すでに相当混雑していそうだ。中にはいると、案の定、人でごった返している。

---- おいおい、外出自粛という言葉を知らんのか

  ようやくビール売り場にたどり着いてみると、目当ての「よなよなエール」がない!大量生産の銘柄に場所を奪われて、お気に入りのクラフトビールが姿を消していた。これも年の瀬のせいか、なんということだ。

 「よなよな」は、信州のヤッホーブルーイングというメーカが作っているペール・エールだ。ネーミングはイマイチと思うが、味は素晴らしい。ホップの苦味とさわやかな香りが、一度飲んだら病みつきになる。何十年も親しんだ「スーパー○〇○」が、ただの炭酸水に思えるほどの芳醇な味わいだ。たまらず、昨年来、ビールは「よなよな」と決めている。

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よなよなエール

  さて、しかたがないので、一度、家に帰って出直しだ。電車で2駅のところにある、「おしゃれなスーパー」に行くことにした。数日前、カミさんとブラブラ歩いて行った時は、確かに「よなよな」がゴマンと置いてあったのを覚えている。

 カミさんと行くと、歩いて20分以内のところは、電車に乗る贅沢は許されないのだが、今日は、サッサと電車に乗り、駅前にあるスーパーに入った。さすがに、「おしゃれなスーパー」は高級なので、混雑していない。

  「よなよな」も棚一杯に陳列されていたので、半ダースほど籠にいれ、ついでに、赤ワインの小瓶(おしゃれなスーパーにはこういうのもあるのだ)と、つまみの生ハム、そして、小さな寿司パックを買った。寿司は、カミさんへの貢ぎ物だ。これを忘れると、痛い目に合うので、用心しなくては。

  意気揚々と帰ってくると、マンションの入り口で、アルバイト帰りのカミさんとばったり鉢合わせしてしまった。

----- どこに行ったの?
----- 「おしゃれなスーパー」にね。
   君に寿司でもと思って、買い出しさ。